乗船採集
みなさまこんにちは。魚類チームのAです。
連日夏真っ盛りの厳しい暑さが続いてますが、いかがお過ごしですか?
毎年恒例となってきた夏のイベント“飼育員のQ&A”は、
今年もたくさんの質問が集まっています。
これまでもたくさん質問が寄せられてきたQ&Aですが、
上位10位以内に入るくらい、よくある質問のひとつに
「水族館の魚はどうやって入手しているのですか?」というのがあります。
入手の方法は色々あるのですが、そのひとつに漁師さんの船に乗船し、
採集させてもらうというのがあります。
先日その機会に恵まれたので、
今回はその時の様子を質問の回答もかねて紹介しますね。
乗船日の7月某日。
船は5時出航ということで、水族館を3時に出発です。
道中酔い止めを飲みます。これ大事!
夏は日の出が早いですね。
水族館を出る時は真っ暗でしたが、港に着いた頃には
明るくなり始めていました。
写真は今日乗せてもらう“定置網漁”という漁を行う船です。
“定置網漁”は海の決まった場所に大きな網を仕掛けておき、
そこに入った魚を獲る漁法です。
漁では事前に仕掛けておいた網を引き揚げて魚を獲ります。
出航しました。
この日は2隻の船で3か所の網をあげるそうです。
出航して40分。網を仕掛けている場所に到着しました!
ブイがたくさん浮いているのが分かりますか?
この下に網が広く張りめぐらされています。
この網をこれから引きあげていきます。
網を揚げるほうの船に漁師さんたちが移動します。
2隻の船が対面するような形で網を挟みました。網上げ開始です。
私たちも生簀に水を張って準備します。
少しずつ対面の船が網を絞りながら近づいてきます。
網が絞られていくにつれ魚も海面付近に寄せられてくるので、
泳ぎ回る魚で水面が波打っています
どんどん近づきます。今日はイワシが大漁です!
ここまでくるとどんな魚がいるのかが見えてくるので、
漁師さんがここで私たちのために一旦網上げを止めてくれます。
ここから急いで欲しい魚を網ですくっていきます。
魚も捕まらないよう必死なので、狙った魚を採るのがとても難しい!!
ただありがたいことに、この時いつも漁師さんたちが一緒になって
魚を採ってくださるので、
なんとか今日も短い時間で魚を集めることができました!
(私もこの時は採るのに必死だったので
採ってる最中の写真はありません!)
網あげ再開です。
寄せ集められた魚たちは船上の生簀へと水揚げされていきます。
やはり今日はイワシが大漁のようです。
私たちのほうはというと、
今回はホウボウ、サバ、タイ、アジ、ヒラメ、ダイナンアナゴなどが
採集できました。
浮いている魚は水圧の差でお腹に空気が入ってしまっているので、
この後注射器を使って空気を抜きます。
この日は最初の網上げで船上の生簀がいっぱいになったため、
残り2か所に行く前に一旦港獲れた魚を降ろしに
港へと戻ることになりました。
私たちは少しでも早く魚たちを水族館へ運ぶため、
このタイミングで下船させてもらいました。
結果、無事魚たちを水族館の水槽に入れることができました。
いかがでしたでしょうか?
乗船での採集、なんとなくイメージつきましたか?
乗船採集はいくつかある魚の入手方法のひとつですが、
東北の海の生きものの展示を掲げている当館にとっては、
地元の魚を入手するうえで欠かせない方法ともいえます。
とはいえ、漁師さんの仕事である漁にお邪魔し、
大事な網上げの時間を割いてもらうことになるので、
少なからず漁師さんたちには負担をかけてしまいます。
それでも乗船を快諾し、採集作業にも協力してくださる
漁師さんたちには感謝の気持ちでいっぱいです。
今回のブログ、魚の入手方法だけではなく、
魚の入手にはたくさんの人たちの協力が必要であるということ、
当館の展示が地元の漁師さんたちに支えられていることも、
回答としてみなさまに伝われば嬉しく思います。