水族館での水換え方法
みなさまこんにちは。
水処理チームのAです。
今回ご紹介するのは、お客さまからよく質問される
水換え作業についてです。
水族館の水換え方法
水換え作業は、水槽の水質を維持するためには欠かせない作業です。
一般のご家庭でよくみられる60㎝水槽などでは、
カルキ抜きした水道水を水量の1/3くらいずつ
定期的に交換することが多いと思います。
水族館でも水量が200リットル程度までの比較的小さい水槽は、
これと同様のやり方で、落水した分を補充することで
水換えを行っています。
しかし水族館の水槽の多くは、水量が数千リットル以上あります。
このような大型の水槽の水換えのために
水を抜いてその分を補充していたのでは、
一度に大量の水と労力が必要になってしまいます。
そのため、基本的には“かけ流し”を行っています。
かけ流しとは、水槽に新鮮な水を常に同じ量入れ続ける方法です。
かけ流しで入れた水は、当然同じ量が水槽から溢れてきます。
落水による換水は水を取り換えるイメージですが、
かけ流しによる換水は、汚れた水を新鮮な水で薄めるというイメージです。かけ流しによる換水は、落水による換水に比べて効率が悪い
(入れ替わりが遅い)ですが、換水による水質の変化が少なく、
水換え作業が必要ないという特徴があります。
海水の再利用
当館では、近くの海から運んできたばかりの新鮮な海水は、
魚類水槽のかけ流しの補給水に使います。
魚類水槽から溢れた海水は、
ろ過してからペンギンやイルカの水槽のかけ流しの補給水に使います。
さらに、ペンギンやイルカの水槽から溢れた海水は、
再度ろ過してろ過槽の逆洗水として利用します。
このように、海水は3回使ってから排水しています。
ちなみに、かけ流しの量については、
1日当たり水槽の水量のだいたい5~10%くらいですが、
飼育生物の密度や水質によって異なります。
淡水の水換え方法
ここまでは海水の水換え方法について説明してきましたが、
水族館には淡水の水槽もあります。
淡水の水槽についても、基本的には海水と同じくかけ流しで
換水しています。
水換えに使う淡水はどこから来るのかというと、
水族館の地下から汲み上げた地下水を使用しています。
汽水の調整
かけ流しの補給は、水換えだけが目的ではなく、
水質の調整が目的の場合もあります。
例えば、マングローブの水槽は、
汽水の水質を再現する必要があるので、
海水と淡水の両方のかけ流しをすることで、
海水と淡水の中間の塩分濃度の水質を維持しています。
他にも、海水魚の治療のために塩分濃度をさげる必要があるときにも、
海水と淡水を合わせて補給することで、
一時的に塩分濃度をさげることがあります。
水の移送方法
かけ流しでは水槽に常に同じ量の水を送ると書きましたが、
どのように送っているのかというと、
地下の貯水槽に溜めた水をポンプの力で水槽に送っています。
補給水を送るポンプは水槽ごとにあるわけではなく、
海水2台(魚類1台、海獣1台)、
淡水1台のポンプですべての水槽へ送っています。
ポンプから水槽までの間は、配管とホースでつながっており、
大元の1本から各水槽へと枝分かれしています。
各水槽の末端にはバルブが付いていて、
水槽ごとに決められた量の水を調整して出しています。
補給水量の調整作業
水の使用量のうち補給水で使う量が大部分を占めるので、
補給水量を管理することも水処理チームの仕事です。
かけ流しで使用しているコックやホースは、
ゴミなどが詰まると補給量が変わってしまうため、
一定の量が出ているか定期的に調べて、
ずれていた場合には調整しなおします。
今回は、水換え方法や水の使い方についてご紹介しました。
水は無限に使えるわけではなく、使える量には限りがあります。
水が使えなくなると、最悪飼育生物の命にかかわるため、
水の使用量を管理することは、
水処置チームの仕事の中でも特に重要です。
水処理チームでは、水換え以外にも、
ろ過槽の管理や装置類の維持管理など、
水槽の水質を維持するためのさまざまなことに取り組んでいます。
今後も、そんな水処理チームのマニアックな仕事について
ご紹介していきたいと思います。