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ホタルの源平合戦

みなさまこんにちは。
広報担当です。

今年もこの季節がやってきました!
6/11(土)~6/26(日)の期間、初夏の風物詩"ホタル"を楽しめる特別展示「ホタルの杜」を開催いたします。今年で4回目の開催です。

私がホタルのイベントに携わるようになって、2年目。
ホタルに関する知識はあまりありませんでしたが、勉強していくうちに、
夜も眠れないくらい気になって仕方ないことがあったんです!

それは…

「ゲンジボタル」と「ヘイケボタル」の名前についてです。

名前をみるとすぐに、歴史と深い関わりがあることが推測できますよね!
武士の世を見事に築きあげたあの一族、源氏と平氏です。
実は私、幼いころから日本史が大好きで、大学でも日本史学を専攻し、
平安時代から鎌倉時代までの古代~中世を専門に学んでいました。
まさに源氏と平氏が活躍する時代です。

そんな私が引っかかっているのは、「ゲンジボタル」が、
「ヘイケボタル」よりひとまわり大きいという特徴です。

名前の由来を遡ると、先に見つけたホタルに「ゲンジボタル」と名付け、
あとから見つかったひとまわり小さいホタルに、
治承・寿永の乱で源氏に平氏が敗北したことから「ヘイケボタル」と名付けた
という説が有力だそうです。

小学生の歴史の授業までは、鎌倉幕府を開いた源氏がヒーローだと思っていたのですが、
さまざまな文献を読むうちに、平氏のほうが力を持っていたのではないかと考えるようになりました。
平氏は地道に財を築き、武士として功績もあげながら、
貴族同等の地位まで登りつめ、政権を獲得しました。
しかし、源氏はその地位を武力で奪いとり、政権を握ったという印象が強いです。
鎌倉幕府を開くなど、のちの世に大きな影響を与えることは確かですが、
私の中で頼朝を筆頭とする源氏は、どうも卑怯なイメージが強いのです。

そこで、私は主張したいのです。

大きいほうが平氏だと!!

※あくまで、個人的な意見です。

その理由は、ゲンジボタル命名の由来から順番に説明していきたいと思います。ゲンジボタルと名付けた理由も諸説あるのですが、3つほど紹介します。

①     以仁王の挙兵 源頼政の亡霊説
後白河天皇の息子である以仁王は、皇位継承の権利を奪われるなど、
さまざまな平氏への不満から源頼政と共謀し、謀反を起こします。
しかし、準備が整わないうちに計画が平氏方へ露見してしまい、
十分な兵を集められることができず、敗戦。頼政は自害し、以仁王は討ち取られました。
この頼政の無念の思いがホタルと重ねられ、頼政の亡霊がホタルとなって戦い続けているという伝説があるそうです。

この以仁王の挙兵、平氏は、圧倒的な兵力で勝っています。
この説から名付けるのであれば、大きいほうがヘイケボタルになりますよね?

②     源氏物語の光源氏から名付けた説
ホタルの光が、源氏物語の主人公“光源氏”を連想させることから、
ゲンジボタルと名付けられたという説です。

フィクションである源氏物語の源氏と、リアルの治承・寿永の乱で敗北した平氏は比較対象にならないのではないでしょうか。
言うなれば、光源氏と対比して描かれるキャラクターは、
異母兄弟の朱雀帝です。
この説でいくと、ゲンジボタルとスザクボタルと名付けるのが、
順当かと考えます。
フィクションとはいえ、帝の名をつけることは恐れ多かったのでしょうか。

③     修験者から名付けた説
ホタルの光が、山で修行する修験者の松明を連想させ、修験者(しゅげんじゃ)がなまって、ゲンジになったという説です。

治承・寿永の乱との関係性はあまりないように思えます。

この情報では納得がいかないので、
続いて、命名された時代を見ていきましょう。

平氏が政権を掌握したのち、江戸時代まで武士の世が続いていきます。
源平の合戦は、治承・寿永の乱で終わりを迎えた訳でなく、
実は脈々と繰り返されていくんです。

治承・寿永の乱が終わり、源頼朝が鎌倉幕府をひらきますが、
3代で源氏は衰退し、北条氏が台頭します。
この北条氏、実は平氏の血をひいているんです!
壇ノ浦の戦いで滅びたのは、平家とよばれる伊勢平氏、
北条氏は分家の坂東平氏とよばれる一族です。

その後も、源氏と平氏の血をひいているということが、武士の名門の証と考えられており、戦国武将たちも「源」、「平」姓を多く主張していたようです。

話は戻りますが、ゲンジボタルという名前を初めて確認できるのは、
1856年の文献だそうで、1856年は、江戸時代!
江戸時代といえば、徳川家!
徳川家康について、調べてみると…
出てきました!

家康は河内源氏を名乗っていたそうです。
つまり、江戸時代は源氏びいきだったのです。
ということで、当時の人々は大きいほうをゲンジ、
小さいほうをヘイケと名づけたと考えられます。

時代背景まで調べてみて、ようやくこの命名に納得できました。

治承・寿永の乱に勝って大きいほうが「ゲンジボタル」、
負けたほうが「ヘイケボタル」と、単純に覚えてしまうことは簡単ですが、
さまざまな視点から考えてみると、
さらにホタルと人との歴史の深さを感じられますね!

最後に…

教科書の歴史は、通説として理解しなければなりませんが、
歴史の答えはひとつではありません。さまざまな説があり、
それを比較することで、新たな説が生まれます。
同じ事実だとしても、その時の権力者やそれを伝える者の立場によって、
ものの捉え方が変わってくるのです。

ホタルは、『源氏物語』、『枕草子』などの歴史的文献にも多く登場し、
文化的昆虫として親しまれてきた存在です。
長い歴史を共に歩んできたホタル。
理系的な観点で、特徴の違いや名前を知ることももちろん大切ですが、
文化や歴史など文系的な観点から見つめ直すと、
もっと新たな発見ができるかもしれません。

6/11(土)の閉館後には、~浴衣で楽しむ 夜のホタル観察会~「ホタルナイト水族館」を開催いたします。

歴史に思いを馳せながら、浴衣姿でホタルを楽しんでみませんか?
私もホタル柄の浴衣を着ようと思っております!

以上、平氏びいきな広報担当でした!


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