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松島湾のアマモ場の変化

こんにちは。魚類担当のSです。
今回は先月行った松島湾の生態・藻場調査について報告したいと思います。

今回は、松島湾の松島湾

先に結果をお伝えすると、
松島湾のアマモ場に非常事態ともいえる大きな変化がありました。
観察を続けていた「モニタリングポイント」のアマモが
1本も見当たらないのです。
私が調査に加わって約5年、今までこんなことはありませんでした。

夏場のアマモ場水中写真(NPO法人環境生態工学研究所 提供)

こちらは、夏の調査で撮影した水中写真です。
アマモがたくさん生えているのがよく分かります。

冬場のアマモ場水中写真(「NPO法人環境生態工学研究所 提供)

対してこちらが、11月に同様の場所で撮影した写真です。
たくさんあったアマモが無くなっているのが一目瞭然です。

撮影したダイバーさんのお話によると、
アマモの根っこの部分が砂から露出し、枯れてしまっているそうです。

アマモは、根っこさえ元気に残っていれば、
新芽がまた根っこから生えてくるのですが、
この状態では来年の新芽が生えることもあまり期待できません。
モニタリングポイントのアマモ場の調査結果は、
全滅あるいは壊滅状態。
少量でも根っこが元気に残っているのを祈ることしかできず、
もどかしく思います。

更には、アマモ場に生息している生きものたちの生息数も
減少していました。

このデータは昨年調査域で生息を確認した生きものの種類と数です。

2022年11月の生物データ

冬は生きものたちの姿が少なくなる季節ではありますが、
アマモが隠れ家になることで、
少ないながらも生きものの生息を確認できていました。

対して、こちらが今年11月調査分のデータです。

2023年11月の生物データ

この生息数と種類の少なさは、異常を感じます。
アマモ場がなくなると、生息数が減ると口では伝えて来ましたが、
実際目の当たりすると、船の上で絶句してしまいました。

なぜ、今年はモニタリングポイントのアマモ場が全滅してしまったのか?
主な原因として考えられるのは、
「夏場の異常な気温上昇に伴う海水温の上昇」です。

今年は、猛暑日が多く、気温もですが、海水温も上昇していました。
去年の夏は平均水温が約25℃、今年は平均水温が約30℃でした。
5℃も平均値が高く、アマモ場にも影響が出たのでしょう。
魚にとって水温が1℃上昇するのは、
人間に例えると5~10℃の変化になると言われています。
アマモは植物ですが、魚と同じように
水温でダメージを受けてしまったと考えられます。

まだ調査段階ですので、水質や他の生きもの、
病気といった別の影響があったかもしれません。

今回の調査結果は非常に残念で、
すぐに解決できるような問題でもありませんが、
下を向いているだけではなく、
私にできることを少しずつ続けていきたいです。

松島湾の再生のためにできることは
小さく果てしないものですが、
その積み重ねが大事だと思っています。

まずは、来年度もアマモ場の調査継続すること、
安定したサンゴタツの繁殖を実現させること、
そして、水槽のアマモの育成!

水族館でこうした取り組みを行うことで、
みなさまに松島湾の現状を知ってもらい、
少しでも海に興味関心を持っていただけるだけでも
ありがたいと思います。

また、いつも調査に同行させていただいている、
NPO法人環境生態工学研究所(E-TEC)は、
松島湾の土壌改善を目的とした
砂団子の投げ込みイベントを行っています。
アマモが生育しやすくなるように作られた砂団子を
福浦橋から海に投げ入れていただくというものです。
次の開催は来年8月に予定されていますので、
ぜひご参加お待ちしております!

水中での砂団子の様子


福浦橋でのイベントの様子(NPO法人環境生態工学研究所 提供)

長々とお読みいただきまして、ありがとうございました!!

仙台うみの杜水族館のアマモ水槽

仙台うみの杜水族館の「アマモ うみの揺りかご」エリアで展示している
アマモは松島湾のモニタリングポイントから採集してきたものです。
小さな水槽で飼育している生きものたちも
過去に松島湾に多く生息していた種類から
最近確認できるようになった種類まで、
松島湾とつながりのある生きものばかりです。

展示を通じて、少しでも松島湾の魅力を感じていただけたら嬉しいです。


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