深海クッキング「未公開」レポート
こんにちは。
魚類チームのOです。
当館の深海展示では、未利用深海生物の利用価値創出を目的に、
飼育員が実際に料理し、その様子を紹介する動画も公開しています。
堅苦しい言い回しになってしまいました。
要は、謎の深海生物を食べたら何かわかるかも!?と思い、
色々食べて深海生物を「深海クッキング」と称して動画を紹介しています。
これまでに、youtubeや館内で10本ほど動画を公開してきました。
YouTube動画はこちらから!
しかし、まだ公開できていないものがたくさんあるのです。
今回はその一部を紹介したいと思います。
「センジュナマコ」
「センジュナマコ」
英名では「sea pig」と言われます。直訳すると「海の豚」。
その名の通り豚のような見た目です。
最近では某無人島でどうぶつ達と暮らすゲームで獲れることで知られています。
実は水深1000~6000mの非常に深い場所に生息しており、
普通の生活ではまずお目にかかることは無いと思います。
ナマコなので、ナマコ酢で食べてみました。
丸い体の中のほとんどが内臓と泥のようなもので占められます。
一般的なナマコと比べ、肉が非常に薄くペラペラです。
また一般のナマコに見られる多数の吸盤も見当たりません。
食感はナマコというよりも「中華クラゲ」という感じです。
味が濃く結構美味しいです。
私たちが良く知るナマコは、岩場や海底の餌を求めて移動、
また海流に流されないよう岩にしがみついて生活しているため、
肉質も分厚いと考えられますが、
センジュナマコはおそらく餌が少ない深海底でひっそり・ゆっくりと
生活しているのでしょう。
そのため、出来るだけ筋肉を少なくし、
水分を多く含み、浮力を得ることにより、
省エネ生活をしていると考えられます。
濃い味は深海の低水温・高圧力に耐えうるための筋肉を構成する
アミノ酸成分が関係していると考えられます。
「アブラツノザメの卵」
深海ザメの1種のアブラツノザメ。青森県を中心に食用になっています。
しかし卵はどうなんでしょう?実はクッ〇パッ〇で
「深海ザメの伊達巻」なるものを見たことがある私。
良い機会なので作ってみました。
レシピ&聞いた話によると、その昔にサメの卵は、鶏卵の「笠増し」として
利用されていたとのこと。
レシピではアイザメ・ヘラツノザメの卵(内子)を利用していましたが、
今回手に入ったのはふ化したばかりの仔魚のお腹についている
卵黄嚢(臍嚢とも言う)から卵黄を入手しました。
レシピ通り1:1で卵焼きを作ると正に伊達巻。
魚の旨味と卵の風味がベストマッチ!
ついでにサメの卵黄だけでも卵焼きを作ってみましたが、
こちらはただの魚臭いボソボソしたもの
(小麦粉に魚の汁を混ぜて焼いたみたいな感じでしょうか…。)でした。
卵黄は、元々赤ちゃんが育つために必要な栄養です。
同じ卵でも魚と鶏では味が全く違いました。
成長に必要な栄養はやっぱり違うのでしょう。
それにしても、これまで食べた魚卵とも似て非なる味。
このあたりは、サメの仲間「軟骨魚類」と
イクラ(シロザケの卵)や
明太子(スケトウダラの卵)などの「硬骨魚類」では
成長成分が違うため味に違いがでたのでしょう。
「白いウニ」
こちらは深海生物ではありませんが…
「ウニといえば、真っ黒いトゲトゲのヤツ。」と
みなさま想像するかと思いますが、
稀に真っ白いウニが見つかることも。
何らかの原因で黒い色素が無いと考えられますが、その原因は不明です。
白いウニはその一風変わった見た目から、
時々漁業関係者の方のご厚意により、
水族館に運ばれてくることも珍しくありません。
(2018年に当館で展示され話題となりました。)
今回は、残念ながら水族館に運ばれた際に
すでに死亡していた個体がありましたので、
みなさまの疑問にある「中身は?味は?」を体験してみました。
このような中身です…
中身は色がついており普通ですね。
ちなみにウニの食べている部分は生殖巣の部分です。
肝心の味は… 薄いです。
味そのものは、普通のウニと変わりません。
味の薄さは体色との関わりではなく、
死亡前のウニの栄養状態が関係しているのではないかと考えられます。
(以前、同じようなウニを食べたことがあるため。)
当館では、食べること、飼育することから
深海生物の謎に向き合っています。
これを「うみの杜水族館的深海生物研究」と私は考えています。
想像する、推測する、妄想する。研究って楽しいのですよ。
これからも「うみの杜水族館的深海生物研究」をご期待ください。
そして、深海ラボで放映している動画も新しくなりましたので、
ぜひご覧ください!!
さて、実は試食動画がまだ複数未編集です…。早く編集しないと…。