ザリガニの調査レポート
こんにちは。魚類担当のAです。
先日、アメリカザリガニに関するとある依頼を受け、
調査に同行してまいりました!
「仙台市内の調整池の近くで、毎年9~10月になると
アメリカザリガニが道路に這い出てきて
車に轢かれたりしています。
また、その上陸する場所が一箇所に集中しているのですが、
それはいったいなぜでしょうか?」
この謎について取材している仙台放送の記者の方から、
調整池の管理をしている市の職員の方、近隣住民の方が
今後の対策のために、ザリガニの生態について知りたいということで、
現地調査同行のご依頼をいただきました。
※調査については、昨日の「Live news イット!」で放送されました。
放送はこちらからご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=95wzQv8tLSw&t=198s
記者の方から、現場の状況について電話でお話を伺ったり、
映像を拝見し、だいたい状況は分かったのですが、
やはり直接その場所に行かないと分からない点が多かったので、
実際に調査に同行させていただくこととなりました。
調整池の形状は、ややすり鉢状になっており、
中心にいくにつれ水深が深くなる感じでした。
調査する場所は主にアメリカザリガニが多く道路に上陸する地点の下周辺とし、池の縁の水深10㎝位の辺りを踏査しました。
池は抽水植物のヨシやガマが多数生え、底は汚泥が堆積していました。
当日は天気も良く、日あたりが良かったため、
暗い場所を好むアメリカザリガニの姿を見つけるのは苦労しました。
ここ最近雨が降っておらず、いつもザリガニが多くみられる場所が
日あがっていたというのも、要因かと思われます。
かなりの数が居てワサワサしているとの事でしたので、
すぐに見つけられるのかと思っていたのですが、意外と苦労しました。
さて、アメリカザリガニの生息を確認しながら、
この調整池に生息する生きものは他にいるのかも確認していたのですが、
当日は魚やカエル等を目撃することは出来ませんでした。
ウシガエルでもいるかなとは思っていたのですが、
鳴き声は確認できませんでした。
この日にアメリカザリガニ以外に確認した生きものは、
アオサギなどのサギ科だけでした。
続いて、アメリカザリガニが多く上陸するポイントの下の部分を
確認したのですが、他の場所は乾いているのに対し、
その場所だけは濡れている状況で、
上の方から水が染み出ている感じとなっていました。
そして、その湿っている場所に集中して、
多くのザリガニの死骸を確認しました。
次に確認したかったのは、この調整池の流入と流出場所。
この調整池の流入箇所は一箇所で、
その周辺にもやや死骸を確認することが出来ました。
また流出箇所は、上陸が多く目撃される箇所の
ほぼ対角線上にある事が確認出来ました。
以上の池に生息する生きものや池のつくりなど、
現場を確認し、「なぜ9月~10月の期間、
ある一定の場所に集中してザリガニが出現するのか」を考えました。
まず、ザリガニがこの時期のアメリカザリガニは繁殖期を迎えており、
抱卵をしたメスが捕食者から子を守るために
回避行動をする時期にあたる事が関係していると思われます。
またこの調整池では、アメリカザリガニの天敵となる生きものが少なく、
隠れ家となる場が多いのもあり、数多くのアメリカザリガニが
生息していると推測されます。その過密状態を避けるための移動も、
考えられるのではないかと思われます。
また上陸場所が一箇所に集中しているのは、
その上陸場所に水が染み出て流れ出ているのが
大きく関係していると思われます。
アメリカザリガニは遡上する習性をもっていますので、
上陸をする個体がその水の流れ出る箇所に
集中しているのではないかと思われます。
流入箇所にも死骸が確認できたのはその関係かと思われます。
また、流出箇所が丁度対角線上にあり、
遡上する習性がそこに関係しているようにも思われました。
今回、直接現場にて確認させて頂き、総合的に判断すると
以上の点が上陸する時期や場所の集中に繋がったのではないかと
推測されます。
この考察が、少しでも調整池の管理をしている市の職員の方や、
近隣住民の方にお役立ていただければ嬉しいです。
私自身も調査を通じて、さまざまな方のお話を伺ったり、
一緒に現場を確認したりと、大変貴重な経験となりました。
今回捕獲したアメリカザリガニは一部展示に使用し、
ご来館いただいたお客さまにアメリカザリガニについて
興味を持って、自然環境について知っていただくきっかけと
なればと思います。
今後は駆除したアメリカザリガニを何かに活用できないか
模索していきたいと思っています。