いろいろ赤裸々 耳の石
海獣ふれあいチームの海老澤です。
魚たちにも耳石があることは
みなさんご存じでしょうか?
今回は当館の海獣たちが食べている魚のひとつ、
マアジの耳石を取り出して、
ご紹介したいと思います。
えらぶたなどを外してみると、頭蓋骨の耳石域が露出します。
(取り出す方法は他にもあります。)
矢印の部分をピンセットで優しく割って開くと…
こちらが耳石です。ようこそ外の世界へ。
耳石というのは、
礫石、扁平石、星状石という
別々の区画(嚢)に収まっている
3種類の石に対しての総称です。
写真は扁平石で、基本的には3種類のなかで最も大きいです。
頭蓋骨の一部を取り出すと、
耳石のあった周辺の内耳の構造がなんとなくわかります。
内耳は人間と同じく聴覚と平衡感覚に関与しています。
実体顕微鏡越しでも観察してみました。
同じ個体から取り出したものですが、
左右差があるのが興味深いですね。
炊く前のお米を潰したような形です。
耳石の主成分は炭酸カルシウムであり、
形状は魚種ごとに異なります。
「イシモチ」とよく呼ばれるシログチなどのニベ科や、
クロホシイシモチなどのテンジクダイ科のなかまは、
比較的大きな耳石をもつのが特徴です。
題名で赤裸々と書きましたが、
実はこの小さな耳石ひとつから、
その個体に関するさまざまな情報を読み取ることができます。
まず、耳石はからだの成長に伴って大きくなるため、
形成された年輪と日輪から年齢および日齢の査定が可能です。
他にも生活史や回遊ルートなどの謎を紐解くヒントも得られます。
つまり、何〇齢の頃、どこの水域でどのような暮らしをしていたか、
餌を満足に食べられていたか、
などの履歴がわかります。丸裸ですね!
耳石は焼き魚状態になっていても取り出せるので、
今晩のメニューが頭付きの魚という方は
耳石取り出しチャレンジをしてみてください。
そして実は、うみの杜でも
お手軽に耳石を見ることのできる場所があります。
閉館後に行ってみると、クラちゃんと目が合いました。
バイカルアザラシ水槽です。
プールの底を観察すると、あまり消化されずに排泄された
マアジやマサバの耳石が落ちていることがありますので、
是非探してみてください!